藩校興譲館、米沢中学、米沢一高、米沢西高、米沢興譲館高と続く米沢興譲館同窓会公式サイト

ホームページロゴ

酒造り・蔵人、行政の「県研鑽会」・団結し研究 地位確立
(2019年3月29日山形新聞より)


酒米の圃場を見学する県研鑽会の会員=2014年8月、鶴岡市羽黒地域

 「『このままでは生き残れない。質の高い酒を造らなけらば』と各蔵に不安、危機感が始まった」。和田酒造(河北町)の和田多聞社長(73)は32年前を思い出していた。そのころ市場では地酒、吟醸酒ブームが起き、生産量や販売量を追い続けてきた酒蔵が質に目を向け始めていた。

 杜氏に対抗

 当時の酒造りは南部(岩手)山内(秋田)津軽(青森)などの杜氏が各地の蔵に出向き、酒を造る手法が主流だった。全国を股に掛ける杜氏はさまざまな情報を共有し、優れた酒の醸造に生かしていた。一方で本県の蔵の多くは地元の技術者が酒造りを担っていた。知識、技術に優れた杜氏に対抗するには、各蔵の力を結集し、人材育成に力を注ぐしかない−。和田さんはその考えを酒造組合幹部に説明し、理解を得た。そして技術者ら約50人が集い、1987(昭和62)年に研究組織「県研醸会」は発足。和田さんは初代会長に就いた。

 このとき行政側から加わったのが、県工業技術センターの研究者だった小関敏彦さん(63・S49卒)=現県酒造組合特別顧問=だ。研醸会は小関さんの指導の下、各蔵が持ち寄ったデータを分析し、酒造りに活用した。酵母の開発や酒米の研究、市販酒の分析も手掛けた。全国の蔵に出向いて技を学び、技術者を招き指導を仰いだ。「研究組織での品質追求という方向性がよかった」と小関さん。次第に鑑評会で好成績を残す蔵が現れ、結果が出ると相乗効果でさらに各蔵の品質は上がっていった。

 「技術をさらけ出す度量、指摘された課題を素直に受け入れる謙虚さを各蔵が持っていた」。和田さんはこう語る。技術を披露した以上、それを上回る技を身に付け、良い酒を造らなけらば−。その思いが質を押し上げた。


本県酒造業界の品質向上に尽力した小関敏彦さん(S49卒)
新時代も「アンテナを高く張り、情報収集、技術向上に努めなければ」と強調する。
=山形市・県酒造会館

 酒米の貢献

 平成に入って次々に登場した本件オリジナル酒米も酒質の向上に大いに貢献した。1995年の「出羽燦々」、2005年の「出羽の里」、15年の「雪女神」はそれぞれ吟醸酒用、純米酒用、大吟醸酒用として開発され、フラッグシップ酒米となった雪女神で造られる酒は特に人気を集めるようになった。

 国内で確固たる地位を築くことができた要因について、和田さんは「酒蔵の団結力」と断言する。10〜16年に県酒造組合会長を務め、地理的表示(GI)保護制度の活用に注力。すべての蔵の賛同を得て、16年2月に国税庁から県産清酒「山形」として指定を受けた。清酒分野で都道府県単位での指定は本県のみ。関係者の間でも「団結力のある山形だからこその指定」とたたえられた。

 「雪が清流を生み、清らかな水は優れた酒米を生む。山形は全ての条件がそろい、酒造りにベストな土地だ」と小関さん。平成を振り返り、「県産酒は著しく成長した。酒造に関わる全員がおごらず謙虚に研さんに取り組んだ結果」とした。今後も組合としてアンテナを高く張り、情報収集、技術向上に取り組むつもりだ。「若者が夢を持ち、集う収益構造を持つ業界にする必要がある」との思いを強くしている。

 県酒造組合の仲野益美会長は「日本酒は土地の文化、風土を背負い、販売を通して全国、海外にそれらを発信できる。県民に愛され、育まれてきた恩返しとして、山形に活力をもたらす存在になりたい」と語る。研醸会は今、結成時のほぼ2倍の100人を超える組織になった。その先達となった和田さんは力を込めた。「時代が変わっても、良い酒が好まれ、飲まれることに変わりはない。付加価値の高い酒を造り、堅実に売るスタンスで、高みを目指し続ける」

「山形を一番に」の思い・県科学技術賞・小関敏彦さん祝賀会(2018年10月30日山形新聞)
飲んで学んで県産酒・講義付き酒蔵巡りツアー・小関敏彦さん(2018年6月30日山形新聞)
山形の食 ワンダフル!全国トップの醸造技術触れる(2018年5月17日山形新聞)
うまい日本酒 偉人伝・新酒鑑評会、東北が14年間一人勝ち(2017年10月25日朝日新聞)
県産業賞に1団体2個人(内藤文徳氏)・科学技術賞は小関敏彦氏(2017年9月12日山形新聞)
どぶろく密造酒にあらず・小関敏彦さん(2014年4月4日朝日新聞山形版)
祝「乾杯条例」努力は継続・小関敏彦さん(2014年3月8日朝日新聞山形版)
「日本酒国際化に貢献を」・小関敏彦さん(2014年2月7日朝日新聞山形版)
日本酒の発展に貢献・石川記念奨励賞、小関敏彦さん受賞(2013年12月28日山形新聞)
地元杜氏、学習会重ね協力・小関敏彦さん(2013年12月20日朝日新聞山形版)
初の金受賞 若手に自信・小関敏彦さん(2013年9月13日朝日新聞山形版)
「勉強の季節」夏が到来・小関敏彦さん(2013年8月2日朝日新聞山形版)
「王国」基本守ってこそ・小関敏彦さん(2013年6月21日・朝日新聞山形版)

3月29日山形新聞