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聴いてひろすけの童謡・レコードに80曲収録・ひろすけ会副会長・高橋秀一さん(S50卒)
(2018年11月2日山形新聞より)


ひろすけ会副会長・高橋秀一さん(S50卒)

■命への温かなまなざし

 山形市中央公民館ホールで開催された童謡フェスティバルに出掛けた。松倉とし子さん(S48卒)の歌を聴いているうちに心が楽になった。昔聞いた懐かしい歌に、心安らぎ、解きほぐされ、子ども心に戻る。童謡は、人を、難しくなく、やさしく素直にする。今年は1918(大正7)年創刊の児童雑誌「赤い鳥」で「童謡」という言葉が発表されて、ちょうど100年。記念の年である。

 浜田広介は、高畠町が生んだ童話作家である。日本のアンデルセンとも称され、代表作「泣いた赤おに」をはじめ数多くの心優しい作品を残した。それらは「ひろすけ童話」として愛され続けている。

 一方、広介が300編にも及ぶ童謡を書き残していることは、あまり知られていない。広介の童謡には、子どもや動物たち、小鳥や小さな虫たちへの温かいまなざしがある。その「ひろすけ童謡」の魅力を多くの人に伝えたい。

 「こどものうた春夏秋冬」(ビクター)という4枚組のLPレコードがある。広介の童謡に魅せられた團伊玖磨が作曲した80曲が収録されている。安田祥子、伊藤京子、小鳩くるみ、平野忠彦、田中星児、ボニージャックスなど第一線で活躍する歌手たちが歌っている。歌の楽譜も「こどものせかい」(音楽之友社)として上下2冊にまとめられている。まさに夢のような作品集であり、広介が残してくれた宝物である。その中から3曲を紹介する。

 「あおいくさはら」はレコードの1曲目に収録されている歌である。オープニングにふさわしく、明るく軽快で元気な曲だ。「あおいくさはら/かけていく/げんきなこどもら/しろいシャツ・・・」(※童謡の引用は「浜田廣介全集」集英社による)

 広介の七五調を主調とする文体は、声に出して調子のよいリズムがあり、童謡にはうってつけである。ひろすけ会の研修旅行で野口雨情の生家に向かうバスの中で、参加者全員で声を合わせて歌った。

 「忘れもの」は、ジョロウグモの歌である。広介は、鬼や竜やヤモリを童話の主人公にした。童謡に女郎蜘蛛が登場してもおかしくはない。シロカネイソウロウグモという小さな銀色のくもが巣に同居することがある。広介はそれを見ていたのだろう。秋が暮れて、ひとり巣に残されたジョロウグモの姿を「銀の小函の/忘れ物/さくらの枝に/わすれたか/夏の河原に/わすれたか・・・」と歌うところに、広介の詩的感性がある。

 「あとの小石は」は、砂利と小石を振り分ける砂利捕り船の歌である。「砂利は砂利ゆえ/砂利とり船に/あとの小石は川底に/しずむ小石は/何見てしずむ/ちらと青空見て沈む」沈んでいく小石に身を寄せて青空を見上げるのは、童謡詩人の心である。やさしさを越えて、情感を包み込む哲学がある。重苦しくならずに、静かに口ずさんでみたい。

 毎年、ひろすけ童話・童謡祭りを浜田広介記念館ホールを会場に開催している。今年は17日(土)の開催である。童話の読み聞かせのほか、地元の子供たちが広介の童謡を披露する。童謡は子どもの歌だ。でも、子どものためだけのものではない。

 皆さんにおこしいただきたい。 (高畠町在住)

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11月2日山形新聞