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安全最優先の意識高く・山形鉄道社長・中井晃さん(66・S48卒)
(2020年8月28日山形新聞より)


山形鉄道社長・中井晃さん(66・S48卒)

 ―業界の現状を踏まえ、自社の取り組みは。

 「地方の第3セクター鉄道は、いずれも沿線の人口減少に伴う利用客減少で経営的に厳しい。その中で、山形鉄道は沿線に4つの高校があり、米沢市内の高校に通う生徒も利用してくれるので、条件としては良い方といえる。通学目的が利用客の7割を占めるため、各高校の始業などに合わせた運航ダイヤや2両編成で利便性を高めている。ただ、高校生の減少より利用客数の減少幅が大きく、生徒の鉄道離れが見受けられる」

 「乗ってもらう機会をつくろうと、2018年からワイン列車やキッズ列車などのイベント列車を始めた。毎月2回は何らかのイベント列車が運行している状況にし、話題づくりに努めた。特に小学校低学年までの親子を対象にしたキッズ列車は好評だ。列車内に遊具をたくさん置き、親の目の届く範囲で2時間ほど遊ばせることができる。赤湯駅では山形新幹線つばさも見られる。新潟県から毎月参加するリピーターなど、子どもたちの心をつかめたようだ。ワイン列車では、生産量が少なく、山形鉄道でしか飲めない銘柄を提供できるよう工夫した。収益は大きくないが、山形鉄道の一つの顔になり得ると定着を目指している」

 「しかし、新型コロナウイルスの影響で本年度は運行できていない。定期券収入はほぼ半減した。車両の消毒や換気、社員の感染予防策などを徹底し、高校生の通学の足を確保することが使命と考える」

 ―会社が求める人材は。

 「いかに安全に運行するかが第一なので安全最優先の高い意識が求められる。もちろん社内教育で意識付けに力を入れている。社員29人の小さな会社だ。採用人数は限られるが、志望者の多い運転士になったとしても乗客への対応や車内清掃、点検修繕など何でもしなくてはならない。鉄道に関するサービス全般を担う意識を持ってもらいたい」

 ―仕事上で最も影響を受けた人物は。

 「全国公募で社長に選ばれた(茨城県ひたちなか市の3セク)ひたちなか海浜鉄道の吉田千秋社長だ。JR常磐線との乗り継ぎ列車の増発などで利便性向上を図り、年間利用客を倍増させた。山形鉄道でも導入できないか検討したが、車両のやり繰りや人員増などハードルが高い。列車本数を増やす投資を実現させた決断力に敬服する」

■中井晃氏(なかい・あきら) 山形大工学部卒。長井市職員として企画調整課長や総務課長などを歴任し、2015年3月退職。同年6月に山形鉄道専務、17年6月に社長に就任。長井市出身。

■山形鉄道 旧国鉄の路線を引き継いだフラワー長井線を運営する第三セクター。1988(昭和63)年4月創立、同10月開業。赤湯(南陽市)―荒砥(白鷹町)間30.5キロを17駅で結ぶ。資本金4億7千万円、従業員数29人。本社は長井市栄町1の10。

 私と新聞 とても大切な情報源

 中井晃社長の新聞の読み方は1面で大きなニュースの流れを把握した上、地域面、経済面を確かめ、おくやみ欄に目を通すという。「山形新聞は地域情報が多く、沿線の住民に支えられている山形鉄道として、とても大切な情報源になる」と語る。

 愛読している企画は「ふるさとの文化財」と「これぞ老舗」の二つ。前者は文化財だけにとどまらず、昔の人々が地域をどのように形成してきたのかを教えてくれると話す。後者は長い時間軸の中で経営形態を変えたエピソードや、環境の変化に対応する話などが数多く載っており、先人がいかに努力して今の時代まで引き継いできたのか興味深く「とても参考になる」と語る。注文としてはネット上の県内ニュース速報の強化。「詳しくは紙面で良いので、記事の頭の部分だけでも、できるだけ早く載せてほしい」と話した。

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