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フラワー長井線 30年の先へ・厳しい経営 頼られる生活の足・イベント・グッズ 知恵絞る
(2018年10月20日朝日新聞より)


フラワー長井線で図書館に通う加藤裕司さん(S44卒)=南陽市の山形鉄道宮内駅

 山形鉄道フラワー長井線(赤湯−荒砥駅、30.5km)が25日、開業30周年を迎える。少子高齢化と車の普及で利用者は減り、経営は厳しいが、高齢者や高校生にとってなくてはならぬ足。観光や物販にも力を入れ、収入増に懸命だ。

 ウサギ駅長「もっちぃ」がいることで知られる長井線の宮内駅(南陽市)。9月の午後、加藤裕司さん(68・S44卒)が赤湯駅行きの列車を待っていた。近くの施設に入所した母(93)の介護のため、7月に東京からUターンした。朝晩、施設に通って母をマッサージする。母の表情が和らぐのを見て、戻ってきて良かったと思う。

 息抜きは図書館だ。運転免許を持っていないので、長井線が頼り、赤湯駅まで乗って市立図書館に行き、喫茶店でコーヒーを味わう。自身も病気の検査で定期的に東京に通う。「鉄路がなければUターンは難しかった。よくぞ残してくれた」

 長井線は、国鉄の廃線対象の路線を引き継ぎ、1988(昭和63)年に開業した。だが、利用客は90(平成2)年度の144万人がピークで、2017年度には約4割の58万人にまで減少。乗客の多くを占める高校生の数も減っている。

 16年度からは運行(上)を山形鉄道が、施設(下)を行政が持つ「上下分離方式」を導入し、同年度決算では20年ぶりに黒字化を達成した。しかし、翌17年度は大雪で12日間運休し、再び赤字になった。

 誘客の柱は観光だ。9月29日には列車内で「ローカル線プロレス」を開催。チケットは1席1万円だったが、全国からのべ100人が乗った。食堂車も作り沿線産のワインを楽しむ「ワイン列車」を運行する。「もっちぃ駅長」などのグッズの売り上げも少しずつ増えている。

 地元も応援する。長井市は20年度末、長井駅と市役所新庁舎を一体化して造り直す予定で、利用拡大への期待がかかる。沿線住民も駅の美化運動に取り組む。

 「人と人のつながりの拠点」として登録有形文化財の駅舎を活用する住民団体「羽前成田駅前おらだの会」の斎藤理喜夫会長(62)は「(沿線には)風景と癒しを求めて常に少しずつ旅人が訪れている。駅と鉄道は地域が生き残るための大事な『仕掛け』だ」と話す。

 バス転換の懸念について、最大株主の県は否定する。16日の定例記者会見で吉村美栄子知事は「地域の大事な足であり、観光面でも大いに活用できる。会社も経営にしっかり取り組んでおり(転換は)考えていない」とした。


中井晃山形鉄道社長(64・S48卒)

中井晃社長に聞く 高校生以外の開拓課題 ■面白がって乗って頂く

 フラワー長井線の現状と未来について、中井晃社長(64・S48卒)に聞いた。

−30年を振り返ると。

 地域の方のために開業した路線ですが、少子化で高校生は減り、車での通勤客も増えました。新幹線ができてから、赤湯駅での無料駐車場まで車で行く人も多く、頭が痛いです。

−経営改善策は。

 乗ること自体を楽しむイベント列車を運行しています。沿線の食材を社内で味わってもらい、経済に貢献します。「方言ガイド」も人気ですし、もっちぃ駅長のLINEスタンプやグッズの販売、車内広告の獲得にも力を入れてきました。

−鉄路の存在意義は。

 昨冬は豪雪で、除雪車の故障や車両の脱線で御迷惑をおかけしました。代行バスを走らせたのですが、渋滞で1時間遅れもありました。列車なら2両編成で一度に200人以上運べます。定時性と輸送力は優れています。

−今後の取り組みを。

 高校生以外の乗客の開拓がカギなので、全国からイベントで招き、地元の方にも面白がって乗っていただく。「山形鉄道は必要だ」と言ってもらえるように頑張ります。

10月19日朝日新聞