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自然への感謝次世代に・林業遺産認定、注目高まる
(2020年6月25日山形新聞より)


田沢コミュニティセンター内に設けられた草木塔資料展示室。
写真や模型、文書などの資料が並んでいる=米沢市

■米沢 おいたま草木塔の会発足10年

 置賜地域を中心に残る草木塔の普及や保存、整備を行う民間グループ「おいたま草木塔の会」が来月、発足10年を迎える。同時に、現在確認されている中で最も古い草木塔の建立からは、ちょうど240年となる。先月には草木塔を含む「米沢市の山と暮らしを伝える遺産群」が、日本森林学会の林業遺産にも認定された。世界的な環境保護意識向上の流れも相まって、草木塔への注目は高まっている。同会の歩みを振り返りながら、今後の取り組みを考える。

 江戸時代に全国で建立された草木塔は34基とされ、うち32基が置賜地区に集中する。米沢市には17基、そのうち南西部の田沢地区に10基が集まる。自然への感謝という草木塔に込められた思いは現代になって再び広がり、今では全国や海外でも建てられている。

 おいたま草木塔の会は2010年7月19日、田沢地区住民らによって設立された。だが、設立以前は、草木塔は地元ではあまり注目されてこなかったという。設立当初から会長を務める大友恒則さん(78・S35卒)も「子どもの頃からあるのはわかっていたが、話を聞いたこともなかった」と話す。

 地元の目を草木塔に向けたのは、外からの視点だった。民間の研究者らが独自性に着目したことで、大友さんたちも「地元の財産に気付かされた」。会の設立は、地区内にある日本最古の草木塔に刻まれた1780(安永9)年の建立日に合わせた。

 現地での勉強会の開催や会報の発行、草木塔周辺の草取りなどの活動を続け、現在の会員は約60人。2013年には地元の田沢コミュニティセンター内に資料展示室が開設され、会が展示に協力している。地図や写真パネル、模型などのほか、川を使って木材を流した「木流し」の資料なども充実している。情報発信の拠点として、初心者から愛好者まで興味を持てるようになっている。18年に開設された道の駅米沢(同市川井)には、実際に草木塔を寄贈した。歴史的な研究だけでなく、草木塔の精神を生きたものとして伝承している。

 県内初となる林業遺産の登録について、大友会長は「山と共に生きてきた地区の歴史が認められた」と喜ぶ。木材の供給地として、米沢を支え続けた田沢地区民の自然への思いは、今も受け継がれる。来年度の開館を目指して市が進めている田沢コミセンの建て替えでは、地元から寄贈された木材が使用される。自然を感じられる建物になる予定で、草木塔の資料展示スペースも残したい考えだ。

 副会長で僧侶の荒沢教真さん(60・S54卒)は「山仕事は命の危険もあり、祈りの気持ちが強かったのかもしれない」と、草木塔を建てた人々の思いを想像する。ただ、記録や伝承がないために謎も多い。大友会長は「当時の自然に感謝した人の思いを考えながら、地域の誇りとして若い世代にも伝えていきたい」と話す。草木塔に込められた思いは色あせるどころか、先見性や先進性を感じる。ミステリアスな部分も生かしながら、広く魅力が伝わることを願う。

日本森林学会認定・草木塔群林業遺産に・県内初「八谷の留め場跡」も(2020年5月28日山形新聞)