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英語多読大きな可能性・米沢市立図書館長・岸順一さん(S51卒・元校長)
(2020年6月3日山形新聞より)


米沢市立図書館長・岸順一さん(S51卒・元校長)

 簡単な英語絵本から始めて辞書を使わず易しい英語が自然と分かるようになる読書法がある。元電気通信大の酒井邦秀先生(現NPO多言語多読理事)が提唱された「英語多読」で、1.辞書を引かない2.分からない語は飛ばす3.難しかったらすぐ投げ出して次の本に移る―の三つの原則から成る。

 先生によれば70代後半で易しい英語絵本から多読を始め、大人向けペーパーバックまで読むことができるようになった人もいるそうだ。100万語を読むことが一つの目安という。

 資料1900冊用意し推進 ■ グローバル時代の教育に寄与

 2020年度からの小学校高学年への外国語科導入に向け、児童および保護者の英語学習に対する関心が高まり、グローバル化の進展とともに英語を学び直したいという年配の方々の声も聞くようになった。この状況を背景に米沢市立図書館では昨年度から約1900冊の英語多読用資料をそろえ、英語多読を推進してきた。

 英語多読は英単語が数語の絵本から始めるので、語数が多くなり難しくなっても絵を見た後に英文を読むことで内容を推測できる。自分がわかる段階を徐々に上げていくことで、気楽に楽しく英語の本を読み進めることができる。実践者からは「初めて英語を楽しいと思った」という感想が寄せられ、家族で始め、家に英語があふれているという話も聞いた。

 新型コロナウイルスの感染防止のため、残念ながら休止している「ナセBA英語多読サロン」には小学生やその保護者、高校生、最高齢74歳と幅広い層が参加している。いつでも誰でも始められる英語多読は生涯学習として大きな魅力と可能性がある。

 英語多読による英語力向上については国立豊田工業高等専門学校(愛知県)の実績がある。02年度に英語多読授業を導入して以来、学生が英語力を着実に向上させ、TOEIC受験者の平均得点も大きく伸びている。英語多読を進めると日本語を介さず、英語を英語として理解するようになることが英語力向上につながるとのことだ。

 英語多読が持つ可能性は大きいが課題もある。一つは英語多読本の数の確保である。英語多読のためには個々の力に合う多くの多読本が必要である。この支援を団体貸出制度がある地域の図書館が担うことは可能である。もう一つの課題は多読の効果が現れるのに時間がかかることだ。

 ある程度長いスパンで多読を続ける必要性がある。既に教育活動に取り入れている学校もあるが、中心は中高一貫校である。長期的な視野を持ち、県内の児童、生徒が楽しみながら英語力を伸ばすため、まずは県教育委員会などが中心となり、他県での英語多読の取り組みや成果を探り紹介してはいかがだろうか。

 その上で各市町村教育委員会や各学校が検討し、小学校においては「親子読書」などでの活用、中学、高校では、部活動がない土日や長期休業中の自主学習、朝読書での活用によって各校種が連携し100万語の英語を読むことを目指す。それらの活動を地域図書館が支援する。このような取り組みを実現できれば、児童、生徒の英語力向上の一助となるのではないだろうか。

 英語多読はグローバル時代における生涯学習の充実と地域社会の担い手育成に大きく寄与できるものと考える。

英語多読にチャレンジ・月1回、読書会企画・米沢市立図書館(2019年7月13日山形新聞)