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中国停滞、世界に打撃・対木さおり氏(H5卒)が講演
(2020年2月14日山形新聞より)


講演する対木さおり氏(H5卒)=有限責任監査法人トーマツ シニア・マネージャー

 新型肺炎の長期化懸念 ネット消費、地方にプラス

 最上県勢懇話会の第237回例会が13日、新庄市の山新放送最北総支社で開かれ、有限責任監査法人トーマツ(東京都)シニア・マネージャーの対木さおり氏(H5卒)が「2020年の経済展望」と題して講演した。新型コロナウィルスの影響の長期化が懸念材料だとし「中国経済が停滞すれば世界経済に大きな打撃を与える。早期の消息が求められる」と語った。以下は講演要旨。

 国内企業の景況感は低下傾向が続いている。(昨年10月に)消費税が8%から10%に引き上げられた。前回(14年4月)の増税前の「駆け込み消費」から時間が経過し、自動車や主な家電製品の買い替え時期に重なるタイミングの引き上げであり、消費の変動が起きるものと予測できた。今回は、特別措置として、キャッシュレス決済へのポイント還元があり8%より低くなることもあり消費を押し上げている状態だが、20年6月までが期限なので、その後の反動減が予想される。実質賃金は伸び悩んでおり、消費自体が厳しい環境に置かれる懸念がある。

 今回の消費税引き上げの影響は「ほとんどない」という声が聞かれる。そうだろうか。小売業の販売高は増税前の9月、各種商品で駆け込みが見られた。大型台風の影響もあり10月以降、多くの品目で低迷するが、ポイント還元の恩恵がある商品は横ばいから微増となっていおる。


日本、世界経済の動向について理解を深めた最上県勢懇話会例会=新庄市・山新放送総支社

 インターネットを利用した消費は年々拡大して入りう。幅広い世代で抵抗感が薄れている表れだろう。30年には50代前半が最も高い消費額を占めるとの予測もある。この動きは、地方にプラスに働く可能性がある。これまで情報を届けられなかった消費者とつながることができるからだ。

 投資という側面からみると、今年は東京五輪がある。過去の五輪開催国の場合、開催年前後で落ち込むケースが多かったが、(12年の)ロンドンは落ちていない。市が細かく予算を管理し、無駄を省いた。開発されなかった地域に投資したことで五輪後も開発が続いた。コンパクト五輪であり、賢い投資だ。東京五輪はどうか。予算は膨れ、計画も不確実要素がある。支出についても規律があるように見えない。経済的に明るい材料とは言い難い。

 日本の輸出は世界に比べ変動幅が大きいが、近年は中国の製造業の企業マインドと重なる傾向にある。米国との貿易摩擦の影響を受ける中国だが、最近は少しずつ上向いていた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大でマイナスの影響は避けられない。中国市場が機能不全となれば、世界経済に及ぼす影響は大きい。

 中国経済は大きな市場であると同時に、輸入への依存度が高いという特徴を持つ。感染拡大で物流の停滞を招き、厳しい状況にある中国だが、20年は大事な年と位置付けている。大量の労働力を誇った時代から、質への転換を図る時期にある。大きな変革を起こす中であり、できるだけ早い新型コロナウイルスの終息が待たれる。

 最後に地元山形の話をする。インバウンド(海外からの旅行)やネット消費の拡大は、首都圏から離れた地方にあった制約を取り払う可能性があると感じる。これからの時代は、規模の小さなコミュニティーから新しいものを模索するやり方でなければ変化に対応できないはずだ。

消費増税は歳出削減後・対木さおり氏講演(2011年2月18日山形新聞)