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消費増税は歳出削減後 三菱総研主任研究員対木さおり氏(H5卒)講演 
(2011年2月18日山形新聞)

対木さおりさん
講演する対木さおり氏(H5卒・旧姓平さおり)

 外需頼みの景気回復 鷹山に倣い中長期政策
 置賜県勢懇話会の第201回例会は17日、米沢市の東京第一ホテル米沢で開かれ、三菱総合研究所政策・経済研究センターの対木さおり主任研究員(米沢興譲館高出・H5卒)が「2011年の内外経済見通し〜持続的成長の分岐点」と題して講演した。対木氏は日本の財政が危機的状況にあることを示し「歳出削減を行った上で信頼される政府が消費税を上げることが必要。同時に、上杉鷹山農様に成長率を高める政策も組み合わせてやるべきだ」と地元の名君の藩政改革を引き合いに必要な対策を示した。講演に先立ち、県勢懇話会置賜支部の大友久太郎米沢商工会議所常任顧問が講師を紹介した。以下は講演要旨。

国内外の経済見通しについて聞く参加者
国内外の経済見通しについて聞く参加者

 国内景気は緩やかな回復基調にあるが、実感がないのは外需中心で雇用や所得、消費につながる力強い回復ではないためだ。今後はエコカー助成金やエコポイント制度終了の影響、海外経済の動向、円高などが先行きを左右する。
 海外経済との関係では四つのリスクへの目配せが必要だ。第一に原油や食料など国際市場における商品価格の急騰。2008年に原油価格が上昇した時のようなことが起こり得る。第二に中国経済の先行き。中国が急激に成長率を落とせば日本も無傷ではいられない。第三に新興国に過剰に流れた資金が一斉に引くリスク。1997年のアジア通貨危機のように、疑心暗鬼が広がって国際経済市場でパニックが起きる恐れがある。第四は日本国債の長期金利に上昇圧力がかかっている点。日本の債務残高の国内総生産(GDP)比が相当大きいことが問題視されている。四つの要素が悪い方向に動けば、緩やかな回復もできなくなる。
 アメリカ経済は消費が回復しているが基盤は弱い、アメリカの消費を決定付けるのは所得、株価、住宅価格だが、今は株価上昇で支えられているだけ。雇用の実態は厳しいままで所得増につながらず、住宅価格も低迷したままだ。
 欧州は二極化している。ユーロ安の恩恵にあずかるドイツなどの輸出国は欧州経済を支える力になっていくだろう。一方、ギリシャなど財政再建中の南欧地域では、増税や歳出削減が経済への大きな負担となっている。
 アジアは手堅い動きが続くだろう。成長鈍化のリスクはインフレ。新興国はインフレをおさえようとしているが、膨大な流入資金や、海外から入る商品の価格上昇など外的要因が多く、対応しきれないのが実情。特に中国ではインフレのコントロールが今年最大のテーマになるだろう。先進国の金融緩和が新興国への資金流入を招いており、緩和を解消していく中で状況は変化している。
 日本経済のキーワードは「低成長・低インフレ」。物価の低迷が経済を押し下げてきたが、まだ供給過剰で需要との差が大きく、デフレ解消には相当の時間がかかるだろう。消費税も社会保障制度もこのままで何も手を打たなければ、国と地方を合わせた借金のGDP比はギリシャ並みの240%まで上昇する。危機的状況だ。ギリシャが海外から借金していたのに対して、日本は国内の貯蓄と企業の利益で賄ってきた。しかし、高齢者が増え、働く世代の所得が減れば貯蓄は取り崩されていく。財政赤字分の資金が確保できなければ、海外から借りなけらばならない。つまり「ギリシャ化」だ。今この問題に着手しなければ間に合わなくなる。政府には財政再建プランだけでもすぐに出してほしい。
 政策に関しては歳出削減が大前提。消費税は上げざるを得ないだろうが、それだけで問題を解決するというのはお粗末な議論だ。歳出削減をきちんとやった上で、信頼できる政府が増税することが重要なポイントになる。中長期的には成長率を高める施策も大事にしなければならない。上杉鷹山のように、きちんとした政策の組み合わせが必要だ。企業の設備投資が少ないのは気持ちが後ろ向きになっているから、成長できるという期待を高めるための政策が求められている。成長の基盤作りに必要なのは規制緩和だ。
 地域経済も観光業などで海外の成長を取り込むべきだ。シニア化への対応も重要。高齢化が進む中国では家族思いの文化があり、バリアフリーなど消費の中身が変わってきている。少子高齢化を逆に転じてビジネスに結び付けることが日本の新しい展開ではないか。

2月18日山形新聞