ぐるっと東北 母校をたずねる 県立米沢興譲館高校-5
努力すれば道は開ける セゾンファクトリー顧問・斎藤峰彰さん=1967年度卒
(2017年6月30日毎日新聞東北版より)
セゾンファクトリー顧問・斎藤峰彰さん=1967年度卒
全国のデパ地下でジャムやドレッシングなどの高級加工食品を販売する「セゾンファクトリー」(高畠町)。創業者の斎藤峰彰さん(67)=1967年度卒=は事業を起こした当初、資金が底をついて苦境を味わうこともあった。常にチャレンジ精神を忘れない熱いハートが、山形の小さな町発の食品を全国ブランドにまで育て上げた。
【佐藤良一記者】
高校時代は、上級生から「生意気だ」と言われるくらい、やんちゃ坊主でした。あの頃にもっと勉強しておけば良かったと思います。でも、高校生活ほど人生で楽しい時はありませんでした。
一番の思い出は、サッカーのクラスマッチです。サッカーをやったこともなかったのに、助っ人を頼まれて出場しました。すると幸運にも、私のゴールで試合に勝ったんです。神様がくれた勝利だとしか思えませんでしたね。あの瞬間は、今でも忘れられない青春の1ページです。
吾妻登山も懐かしい思い出です。クラスメートと山頂に着いた時の達成感は、登って初めて分かりました。
卒業後、東京農業大に入りましたが、父が病気に。長男の私は中退して、家業のしょうゆ製造を継ぎましたが、結局、うまくいきませんでした。そんな時、長野で食べた2個1200円のジャムの味を思い出したんです。本当にうまかった。
「俺、ジャム作るから」と両親に告げると、「値段が高くたって、健康に良くて、おいしいものを作れば必ず売れるから」。母のこの言葉が私の後半生を決めました。旬の工場という意味で名付けた「セゾンファクトリー」の原点は、母から教わりました。
おいしいジャムを作るために試行錯誤を繰り返していた頃です。資金が底をついて砂糖を買う金すらなくなりました。一番苦しかったですね。でも、弟が「兄貴が作るジャムはおいしいから、必ず成功する」と言って励ましてくれました。弟はマネジメントの天才でしたね。だから、兄弟で今の会社を創業した際、初代社長は弟にお願いしました。
当初の社員は、私の後輩や弟の友人で、やんちゃな若者ばかり。不良少年の更生施設のようでした。でも運動部出身者が多く、苦しくとも、勝利のために乗り越えていくガッツだけはあった。志は「世界に通用するスーパーブランド」でした。
銀座の街を歩き、人々の好みを研究しました。米国にも渡り、ニューヨークのスーパーなどを弟と見て回りました。弟は志半ばで亡くなりましたが、心の中では今も二人で歩んでいます。おかげで全国に29店舗を展開するブランド企業に成長しました。
生きていれば、試練は必ずやってきます。けれども、努力すれば道は開ける。私が伝えたいことは、それに尽きます。
ブランドを作り、維持していくために大切なのは、人づくりです。社員は「家族」です。「明るく、楽しく、さわやかに」をモットーにしています。人生は一度きり。仕事にも遊びにも一生懸命に打ち込みたいですね。
さいとう・みねあき 1950年高畠町生まれ。71年、東京農業大農学部を中退し、家業のしょうゆ製造を継ぐが、のちに破綻。89年、ジャムやドレッシングを製造・販売するセゾンファクトリー(高畠町元和田)を弟・明彦さんと共に創業。2008年に社長、16年に現職。著書に「セゾンファクトリー 社員と熱狂する経営」。
東吾妻山に登頂し、記念撮影する生徒ら=1982年撮影
吾妻登山で絆深め
米沢興譲館高の生徒に修学旅行の体験はない。その代わりに経験するのが吾妻登山だ。3年間で、福島県との県境付近にそびえる西吾妻山(2035メートル)、東吾妻山(1975メートル)と、やや南にある安達太良山(1699メートル)の三つの山に登った。雄大な自然を眺めながら登り切った時の爽快感は、何物にも代え難い。今も1年生が登山を続けている。
安部徹さん(62)=1973年度卒=は「皆で山に登って一緒に飯を食べ、宿泊したことは、修学旅行とはひと味違った経験だった」と振り返る。
新聞部が発行する学校新聞「興譲」の71年8月19日号に、1年生の安部さんが寄せた感想文が載っている。
「雨で途中から下山したことを残念がる人もいましたが、私たちはそれ以上に素晴らしいものを得たと思います。それはクラスメート同志の会話が、非常に開放的になったということです」
そして、こう結んでいる。「たったあの一日で、一人一人がお互いを同じクラスの仲間だと本当に意識し始めた感じになったのです。そして最も大きな収穫は、新しい友だちができたということです」
【佐藤良一記者・S52卒】
■卒業生「私の思い出」募集
県立米沢興譲館高校卒業生の皆さんの「私の思い出」を募集します。300字程度で学校生活や恩師、友人との思い出、またその後の人生に与えた影響などをお書きください。卒業年度、氏名、生年月日、職業、電話番号、あればメールアドレスを明記の上、〒100-8051、毎日新聞地方部「母校」係(住所不要)へ。メールの場合はtohoku@mainichi.co.jpへ。いただいた「思い出」は紙面や、毎日新聞ニュースサイトで紹介することがあります。
▼ 第6回 挑戦や挫折を糧に 元フェンシング五輪代表・池田めぐみさん