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郷土の食どう伝える?「面倒くさい」料理こそ残して・漫画家・ラズウェル細木さん(59・S50卒)
(2016年4月24日朝日新聞より)


ラズウェル細木さん(59・S50卒)

 「だし」、ウコギ、米沢鯉、イナゴの佃煮、雪菜―米沢市出身で東京在住の漫画家・ラズウェル細木さんは、一昨年から本誌の連載「勝手に東北世界遺産」で5回にわたって郷土に伝わる食材や料理はの愛情を語ってきた。「遺産」を次世代につなぎ、それらを生んだ土地の魅力を認識してもらうにはどうすればよいのか。ラズウェルさんと一緒に考えた。

 ―イナゴにしても雪菜にしても、調理に手間がかかる食材でしたね。
 その通りです。平地が少なく冬は雪で閉ざされた厳しい環境の中で、食べていかなければならない。少しでも創意工夫しておいしいものにしていこうという先人の努力を感じます。ある意味、涙ぐましい感じもしますね。
 これだけ社会が豊かになると、それほど手間をかけなくてもおいしいものは食べられますが、面倒くさい料理は東北、山形の土地の特性が表れていると思います。ぜひ残してほしいと期待しています。

もっと県外に
 ―次の世代を担う若い人たちに伝えるのはなかなか難しいように思います。
 コンビニが地方にも広がり、全国どこでも同じ味のものが食べられる。確かに便利ですが、郷土の味は、意識的に残していかないと残らないのではないかという不安を感じます。その一方で東京都心にある各自治体のアンテナショップはにぎわっていて、地方出身の人が懐かしむだけでなく、ほかの土地出身の人が面白がって食べてくれる。そこに道はあるのではないでしょうか。これまで紹介した食材も料理も自信を持ってお勧めできます。
 「だし」も本当は野菜を細かく刻んで、すぐ食べるものだと思いますが、パックに入った商品を販売していくのも、山形の良さを訴えていく上では大事なことでしょう。

 ―政府は「地方再生」をかけ声に、自治体に知恵を出すように促していますが、人口減少に高齢化と難題が続きます。
 取材で地方を回ると、特定のお店や観光スポットにお客が集まっていても、、街全体からはにぎわいを感じられないことが多い。企業や工場の誘致が難しい状況では、やはり観光に期待するしかないのが現状でしょう。土地の魅力を見つけ出し、それをアピールする仕方次第でまだ伸びる余地はあると思います。

資源まだまだ
 ―山形県でのお勧めは?
 私は個人的には高畠町が好きですね。母の実家がある町ですが、三重塔のある阿久津八幡神社や岩山の風景が面白い二井宿の観音岩、伊達家の墓所。このあたりを推したい。同じ置賜地方の長井市には、今や唯一食べられる生肉として人気の馬肉料理もある。あまり知られていない観光資源はいっぱいある、という感想を抱いています。

 ―政府は中央省庁の一部を地方に移転させることを検討しています。
 一極集中が進む東京から様々な機能を分散させていく必要はあると思います。出版の世界を見ても、デジタル化が進み、インターネットを通じて世界中どこでも同じ情報を入手できる状況では、東京にいる必要性は少なくなっているのではないでしょうか。
 私も最後は京都で暮らしたい。京都はよく「外の人に冷たい」と言われますが、それは祇園とか一部の高級店のイメージ。街はのんびりしているし、よく行く居酒屋は、主人も、他のお客さんも親切で気楽に過ごせます。日本の首都・東京で働き、そこでの生活に疲れた人が地方で暮らす、という生き方も「あり」だと思います。 (聞き手・戸松康雄)

■ラズウェル細木(らずうぇる・ほそき) 1956年、米沢市生まれ。米沢興譲館高から早稲田大学に進み、同大学漫画研究会に所属。94年から「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で連載を続ける「酒のほそ道」は、四季折々の料理やお酒がテーマ。この作品などで2012年、第16回手塚治虫文化賞の短編賞を受賞した。単行本25巻には「米沢旅行」も収められている。

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