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マダガスカル紀行 吉田 真さん(S38卒)

チャイロキツネザル
チャイロキツネザル。マダガスカルで最も多いキツネザル。

 2009年7月末から11日間の日程で,アフリカ・マダガスカルのエコツアーに参加した。これは神奈川県の生物教諭のグループが企画したものである。このグループは1年おきにこのような「海外研修」を行っており,僕は,高校教諭ではないが,この企画に便乗して参加させていただいた。  マダガスカルはアフリカ大陸の東南に位置する島国で,「キツネザルとカメレオンとバオバブの木の国」というのが,出発前の僕の印象だった。植物の8割,キツネザルのすべて,カメレオンの3分の2がマダガスカルの固有種,すなわちこの島にしかいない生物である。そのような生き物がたくさんいるというのは,僕のような生物学者にとってはとても魅力的なことである。  この時期はうちの大学では期末試験などで忙しく,11日間も休むのはとても難しかったが,いま行かないとマダガスカルにはたぶん一生行かないだろうと思って,思い切って行くことにしたのである。僕も今月末で65歳。暇になってからあちこち行きたいと思っても,もはや身体がいうことを利かなくなっているかもしれないのだ。


 行く前に,京都のバプテスト病院で黄熱病・A型肝炎・B型肝炎・破傷風・狂犬病などの予防接種を受けた。前回行ったときに,「注射を打つのでお尻を出してください!」と言った看護婦さんはいなかった。いくらおっさんでも,人前で尻を出すのは恥ずかしい。「まだ心の準備が・・・」と言って大笑いされたことを思い出す。同じ病気で期間をあけて2回注射するものもあり,保険が利かないので,これだけで10万円近くの出費である。日本にいれば必要ないことだが,熱帯や亜熱帯の自然に入るのはそれなりの準備が必要なのだ。

カメレオンの一種
ポインセチアの木で見つけたカメレオン の一種。葉の色に合わせて,体色を赤に 変えている。


  参加者は15名。興味・関心の違いに応じて,鳥類・哺乳類などいくつかの班に分かれている。クモ学者の僕はもちろんクモ班である。関東在住者からなる本隊は成田発だが,僕とクモ仲間のK夫妻は関空発。バンコック経由で約22時間の空の旅である。現地時間の真夜中にマダガスカルの首都アンタナナリボに着く。寒い。南半球にあるマダガスカルは地域的には亜熱帯に属しているが,今は冬。おまけに標高1400メートルの高地である。  ホテルで仮眠した後,2台の車に分乗してペリネのアンダシベ国立公園に向かう。早朝だというのに,アンタナナリボの街は人々でごった返していた。道端で,トマト・キュウリ・カリフラワーなどの野菜やお米,マンゴー・ビワなどの果物,牛肉のブロックなどが所狭しと売られていた。まだ暗いうちから,近隣の村人たちがこれらを運んでくるのである。こんな混乱の中で事故も起こさずに運転するドライバーの腕はたいしたものである。

 焼け焦げた建物があったのでガイドのリチャードに尋ねると,これは放送局で,火事で焼けたという。正確に言うと,焼けたのではなく焼かれたのだ。半年前にクーデターがあり,役所や女王宮も焼かれたという。その後の政治的混乱と経済不振で,農業だけで食べていけなくなった人たちが大都市に流れ込み,失業率も高く,治安が悪化しているらしい。クーデターの後しばらくは外国からの観光客もなく,リチャードもガイドの仕事がまったくなかったらしい。今は一応小康状態といったところらしいが,治安が悪いために僕たちはこの町でほとんど買い物もできなかった。

吉田 真(S38卒) 立命館大学生命科学部生物工学科 教授
里山の生物多様性,造網性クモ類の種間関係,環境の安定性とクモ類の生活史戦略など