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井上ひさし支えた半生語る・没後10年・東ソーアリーナ・遠藤事務局長
 (2020年11月5日朝日新聞より)


「弦地域文化支援財団」事務局長・遠藤征広さん(S49卒)=上山市二日町

 遅筆「書くのは速い。書くまでが遅い」 突発事項「大丈夫なよう 鍛えられた」

 山形県川西町出身の劇作家、井上ひさしさんの没後10年に合わせ、山形市の「東ソーアリーナ」(旧シベールアリーナ)を運営する「弦地域文化支援財団」事務局長の遠藤征広さん(65・S49卒)が10月末、上山市立図書館で講演した。「手鎖心中」「天保十二年のシェイクスピア」「吉里吉里人」「頭痛肩こり樋口一葉」など井上作品に触れながら、井上さんに捧げた半生を振り返った。

 遠藤さんも川西町生まれ。高校時代、「新聞を見ると『井上ひさし』の名前をすぐ発見できるほど」の大ファンに。1982年に「お金はありません。来て下さい。大好きです」と手紙を書き、同町で井上さんの講演を実現した。

 その後、千葉県の井上さん宅で住み込みで働き「命懸けでやる井上さんの芝居をたくさんの人に見てもらいたいと思うようになった」。劇団「こまつ座」の旗揚げ公演を手伝った。玄関先まであふれていた井上さんの蔵書を生かし、川西町の図書館「遅筆堂文庫」の設立に尽力した。


「遅筆堂文庫」へ寄贈するため、自宅の蔵書を運び出す井上ひさしさんと、遠藤さんら
=1987年2月、千葉県市川市

 井上さんの作風について「資料を丹念に読み込んで、百の真実の中に一つの虚構を作る場所を探す」と説明。「書くのが遅いと言われるが書くのは速い。書くまでが遅い」と語った。

 アリーナは井上さんの長年の劇場構想を、洋菓子会社シベールの創業者、熊谷真一さんが実現したもの。遠藤さんは2008年の開館に合わせ、こまつ座営業部長から移った。

 作家の大江健三郎さんの講演が当日延期になってもトラブルなく乗り切ったことを振り返り「遅れても大丈夫なよう常日頃、井上さんに鍛えられていた」。柳家小三治さんの落語が急きょ延期になった時も二つ返事で承諾。「抵抗してもダメなものはダメ。徐々に井上さんに培われた力です」と笑いを誘った。

 アリーナはシベールが手を引いて資金難に陥ったが、3月に総合化学の東ソーが支援を名乗り出た。「井上さんの思いがあるものだと思うので、どんなことがあっても継続しなきゃいけないという思いがあるんです。亡くなったのにそうじゃない気がしていて、これ(アリーナ)がなくなれば、本当に亡くなる気がするので」

 長女・都さん15日講演

 東ソーアリーナ(山形市蔵王松ケ丘2丁目)は、井上さんの誕生日前日にあたる15日午後2時から、こまつ座で24年間代表を務めた長女の都さん(57)の講演会を開く。演題は「井上ひさし没後10年 今だから語れる父のこと」。入場料1500円(当日2千円)。問い合わせは同館(023・689・1166)へ。