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豊かな味や香りにも注目して・宮城大学・金内誠教授(H2卒)
(2020年1月1日朝日新聞山形版より)


宮城大学・金内誠教授(H2卒)

 私たちの世界には、無数の微生物が暮らしています。発酵食品に関わるだけでも何千、何万もの種類がいると言われています。

 微生物はエネルギーを得るため、糖やたんぱく質などを酵素で分解し、別のものに変えます。これが人間にとって有益であれば「発酵」です。

 例えば、酵母が糖を食べて出すアルコールを利用するとワインができ、炭酸ガスを利用するとパンができますね。同じプロセスでも、できたものが有益でなければ「腐敗」と呼んでいます。

 人類は昔から、こうした微生物の「おこぼれ」をうまく利用し、微生物と共存してきました。

 特に日本人になじみ深いのが、カビの一種である「こうじ菌」。湿った風土に適し、多くの酵素を持つ万能菌です。日本酒やしょうゆ、みそ、かつお節など、日本の食文化を広く支えています。

 みそを例に、発酵のプロセスを見てみましょう。原料は大豆と塩、米です。

 まず蒸した米にこうじ菌を振ります。こうじ菌が繁殖すると、こうじになります。温度30度前後で適度に空気を送ると、菌糸を張り巡らせます。

 続いて大豆と塩を混ぜ合わせます。こうじ菌は、プロテアーゼという酵素で大豆のたんぱく質をアミノ酸に、アミラーゼで米のでんぷんをブドウ糖に分解し、みそのうまみや甘みが出ます。さらに加えた酵母や乳酸菌が糖を乳酸などに変えて複雑な味わいになり、風味や香りも醸し出されます。

 塩はバリアーの役割です。塩分が高いと他の菌は生きられず、耐塩性のあるこうじ菌などだけが働ける環境が整います。

 発酵の主なメリットは、1.腐りにくくなる 2.栄養価が増す 3.味や香りの嗜好性が高まる、の三つです。近年、発酵食品への関心が高まっていますが、やはりその「おいしさ」に注目してほしい。発酵を通じて、いかに豊かな味や香りを生み出すか―。その研究を続けたいと思っています。

■金内誠 かなうち・まこと 1971年、米沢市出身。1999年に東京農業大博士後期課程修了。米カリフォルニア大デービス校研究員や民間食品会社を経て、2005年から宮城大へ。17年から同大教授。専門は発酵醸造学。実家は米沢市内の酒店。