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延ばそう 健康寿命・きれいな血管 脳梗塞減・有本貴範さん(H5卒)
山形大学医学部付属病院第一内科病院講師
(2019年5月16日山形新聞より)


山形大学医学部付属病院第一内科病院講師・有本貴範さん(H5卒)

 山形新聞・山形放送の新たな8大事業「県民健康講座」が5月9日、山形市の山形メディアタワーで開かれた。山形大学医学部付属病院第一内科病院講師の有本貴範氏が「脳梗塞の予防、動悸に気をつけよう」、大泉胃腸科内科クリニック(山形市)院長の大泉晴史氏が「胃がんなんて怖くない ピロリ菌をもっと知ろう!」と題して、それぞれ講演。約110人の参加者が、不整脈を引き起こす脳梗塞の予防や、ピロリ菌を除去し胃がんを防ぐ重要性について理解を深めた。講演要旨を紹介する。

 脳梗塞は大きく分けて3種類ある。細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」は比較的軽い症状で、ラクナはラテン語で小さなくぼみを意味する。より重症なものに、太い血管が動脈硬化で細くなったり詰まったりする「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓でできた血の塊(血栓)が原因の「心原性脳梗塞」がある。

 県対脳卒中治療研究会が発表した最新のデータ(2018年12月)では、種類別の割合はアテローム血栓性脳梗塞が最多の45%、最も重症な心原性脳梗塞は24%、ラクナ梗塞は23%。心原性は亡くなることも少なくなく、助かっても介護が必要な状態になる。

 心原性脳梗塞は、不整脈(心房細動)が原因だ。正常な心臓は微細な電気興奮を発生し1分間に50〜100回動き、1日に10万回発電する。高血圧、肥満や喫煙などが異常発電、つまり不整脈を引き起こし、血栓をもたらして脳梗塞を引き起こす。心房細動の患者は推定で国内100万人以上、本県は1万人以上となっている。

 心房細動は▽動悸▽息切れ▽めまい▽疲労感−など症状がはっきりとした場合もあるが、半数が無症状とされる。だからこそ定期的に脈を測る検脈が重要だ。手首をそらせ、しわがある所から3本の指で計る。規則正しい心拍数に慣れておけば、ばらばらな脈を見つけやすい。

 心房細動になったらどう対処するか。最も大切なのは抗凝固薬で、血液をサラサラな状態に保ち、血栓を防ぐこと。ビタミンKをたくさん含む納豆を食べると効果が弱くなる薬もあり、薬剤師に相談が必要である。症状が軽い場合は、脈が乱れていても慌てず、かかりつけ医から心電図検査を受けてほしい。

 薬のほか、異常発電に対してカテーテルで治療する方法もある。肺静脈の周りの心筋に対し、高周波エネルギーを当てる「高周波アブレーション」や「冷凍凝固アブレーション」という治療法。カテーテル治療は薬より有効性は高いが、合併症を引き起こす可能性もあり、症状に合わせた薬とカテーテル治療の二刀流がお勧めだ。

 若さとは血管がきれいかどうか。心臓や血管を汚す危険因子は高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙だ。これらをコントロールできると、脳梗塞や心房細動の発症は減少する。就寝前の精神状態が、翌日の心房細動の発症に影響するとの科学データもある。くよくよせず「まあ、いいか」の気持ちも大切に、まずは日ごろから検脈を心掛けてほしい。

※有本貴範(ありもと・たかのり) 44歳。高畠町出身。山形大学医学部卒業。筑波大学附属病院循環器内科病院講師などを経て、2019年1月から山形大学医学部付属病院第一内科病院講師。