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地域に学び未来つくる・東北おひさま発電社長・後藤博信さん(S40卒) 
(2018年12月28日山形新聞より)


東北おひさま発電社長・後藤博信さん(72・S40卒)

 −業界の現状を踏まえ、自社の取り組みは。

 「地域社会こそが未来をつくり出せる。地域にしか未来はないという考え方で事業に取り組んでいる。自然を育んでいる大地にこそ人間本来の生活の場がある。生活のベースとなる電力を自給自足していく環境を有しているのは、自然との共生が可能な地域社会だけだと確信している」

 「飯豊町眺山で牛ふんを発酵させて電気を生み出すバイオガス発電の準備を進めている。プラントは2019年に着工し、年度内の完成を目指す。最大出力は約500キロワットで、年間発電量は一般家庭で約千世帯に相当する400万キロワット時を見込んでいる、臭気が発生しないよう牛ふんをパイプラインで運び出し、タンクの中で発酵させてメタンガスを生み出して電気と熱を取り出す。最後に出てくる液肥も有機肥料として循環型農業に活用でき、米沢牛の肥育農家は牛ふん処理から解放される。事業費は約10億円と大きいがそれを売電収入で回収していく。臭いなどの環境に配慮した画期的なプラントであり、課題解決型の施設として情報発信にも努めていく」

 −仕事上で影響を受けた人は。

 「私は親会社の那須建設で相談役の各色もいただいている。グループ社員は約230人おり、若い社員との触れ合いが最大の刺激になっている。若い人はエネルギーがあり、目標も違う。創業時の苦労を共有しながら『経営は組織の僕(しもべ)である』という考え方を取り入れ、外部の人材も柔軟に取り込んでいる会社経営に刺激を受けている」

 「バイオガス発電の計画作りで地元の方々と話し合いを進め、合意を求める中で新しいヒントをいただいている。年配の方からは『わくわくする話を聞かせてもらった。頑張っておごえなぁ』と励ましを受けており、こうした経験も前に向かう力になっている。発電事業を通じて、人間らしい生き方や自然との共生を追求していきたいという思いを新たにしている」

 −求める人材は。

 「与えられた責任に対し謙虚に取り組み、学び続けることができる人。学びに終わりはなく、学んだことも日々変化していく。地域社会に参加して刺激を受け、未来をつくっていくための学びを続けてほしい」

 −具体的な育成方法は。

 「那須建設グループはもともと若い人に権限を委譲し、社員が学びながら育つように配慮している。環境創造企業として、地域を掘り起こしていくためには熱意や知恵、構想力が必要であり、若い人にはあえて『こういう課題があるよね』と、違う視点を提示するように心掛けている」

■後藤博信(ごとう・ひろのぶ):早稲田大政治経済学部卒。1970(昭和45)年に野村証券入社。常務、専務などを歴任し2000年、副社長に就任。野村総合研究所副会長などを経て09年11月から11年8月まで飯豊町副町長を務めた。13年3月から東北おひさま発電社長。飯豊町出身。

■東北おひさま発電:那須建設(長井市)の100%出資子会社として13年3月に設立された。社員数は5人。再生可能エネルギー全般を手掛けており、13年8月に県内初のメガソーラーとなる長井おひさま発電所(長井市寺泉)を稼働させた。現在、長井第二(同市下伊佐沢)いわき(福嶋県)南相馬(同)の各おひさま発電所4施設を運転中で合計最大出力は6.9メガワット。民間企業では県内初となる農業用水を利用した野川3号幹線小水力発電所(長井市平山、最大出力15キロワット)を今年9月に稼働させた。本社は長井市屋城町7の1。

 私と新聞 深みのある記事を期待

 「再生エネルギーの電源の可能性、原子力発電などテーマごとに記事のスクラップを続けている」と話す後藤博信社長。ニュースに接する際は事実関係の整合性に目がいき、「新聞に求めたいのはファクトチェック(事実検証)」と指摘する。政治家の発言一つをとっても、読者がそれをどう受け止めればいいのか。言いっ放しになってはいないか。消費増税と社会福祉の関係で、政府の発言はどう変わってきているのか−。「こうした視点で読者に次の発信をしてもらえば、より読み応えが出てくるのではないか」と強調する。

 原発や経済効率などに関する最近の論争は「左右に振れ過ぎている」とも。「自らの立ち位置を明確にした上で、認め合ったり、意見し合ったりする多様性が民主主義だと思う。議論が入り口で止まったままでは、人間の知恵は劣化して権力にくっつき、全体主義的な雰囲気が漂ってしまう」と警鐘を鳴らし。「山形新聞には、深みのある読み方ができる記事を今後も期待したい」と話す。

12月28日山形新聞