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搾乳牛増へ繁殖検診・板垣幸樹さん(H18卒) フィリピン、獣医・衛生
(2018年9月8日山形新聞より)


酪農牧場の乳牛観察で人工授精が可能な牛を探す板垣幸樹さん(H18卒)

 フィリピンのボホール島の酪農牧場に赴任してからすでに1年が経過しました。これまでの1年間はフィリピンの酪農業のためにできることを、配属先のカウンターパートと相談し、提案した期間でした。

 配属先の牧場は牛乳生産の低迷を課題として抱えています。その問題の解決策として、主に搾乳牛の頭数を増やすことと、乳質の改善を目標に掲げました。搾乳牛を増やす手段の一つは、出産を増やすことです。乳牛は他の動物と同様、出産をしなければ牛乳を出しません。

 特にフィリピンの乳牛は日本に比べると、1頭が1日に生産できる乳量も搾乳できる日数も大幅に少ないです。牧場には牛乳を生産せず、妊娠もしていない牛が多くいました。これらの牛を受胎させることで、約9カ月後には子供を産んで牛乳を搾ることができます。さらに産まれた子牛が雌だった場合は、大人になってから乳牛として活躍してくれます。妊娠牛が増えることで搾乳頭数が増加し、次第に若い乳牛も増えることから、これらの繁殖業務を活動の一つとして開始しました。

 最初に始めたのは全乳牛の繁殖状況のチェックです。牧場内の妊娠頭数が不確定だったため確認作業を行いました。この繁殖検診は今でも月に1、2回実施しています。同時に状態が悪い牛は、牧場のスタッフと相談して治療をお願いしています。

 また早朝の牛の観察を始めました。フィリピンでも牧場の朝は早いです。夜明け前の午前5時から、スタッフが搾乳や給餌のために放牧されている乳牛を集め始めます。この放牧牛が集まる涼しい時間帯が、牛を眺める良い時間です。乳牛の人工授精を行うには、実施できる乳牛を探すことから始まります。そのために午前5時半から1時間ほど、スタッフと一緒に乳牛を観察しています。

 現在では赴任直後と比較して、搾乳牛と妊娠牛の頭数が増えてきました。今後の私の課題は今の状態を維持することと、私がフィリピンを離れた後も繁殖検診を続けられるように、牧場スタッフに技術を伝えることです。

 ■板垣幸樹(いたがき・こうき) 岩手大を卒業後、千葉県で5年間、産業動物の診療業務に従事した。フィリピンに派遣され、職種は獣医・衛生。川西町出身、31歳。

生産量多い乳牛育成・フィリピン・板垣幸樹さん(2018年5月5日山形新聞)

9月8日山形新聞