各学校で授業研究会・棚村慧史さん(26・H21卒) エチオピア・理科教育
(2016年5月13日山形新聞より)
空き缶と新聞紙、ビニールを用いたピンホールカメラを紹介する棚村慧史さん(H21卒)
エチオピアの首都アディスアベバに来て1年半が過ぎました。 治安の悪化により政府から非常事態宣言が出され、これまでの平穏なイメージとは変わったエチオピアの姿がありました。幸いにも首都の情勢は安定していたため、2年目の活動を継続することができています。
エチオピアの学校現場では教材の不足に加え、教員養成大学において十分な教育がなされていないことや、転職が多いことが原因で教師の実験技術が十分でない現状があります。われわれはこの現状を改善するために首都の理数科隊員で行うグループ活動に力を注いできました。
1年目に15校で実施した「授業研究会」は、2年目には21校、生徒3788人、教師566人まで拡大することができました。「授業研究会」では、参観者の前で、生徒実験や実践的な生徒の活動を取り入れた授業を講師が行い、その後に討論会を開きます。
私の活動期間も終盤に差し掛かり、配属先において同僚とともに授業研究会を実施しました。普段は日本人が講師を務めますが、去年の授業研究会を見学した私の同僚が講師として手を挙げてくれ、講師も参加者もエチオピア人という授業研究会が実現しました。慣れない授業研究会だったので改善すべき点も見られましたが、普段よりも討論に熱が入り、活発な意見交換をする姿が印象的でした。
また、授業研究会後には日本人が講師となり、現地で手に入る材料を用いた実験や、授業例を紹介する実践的な研修も行いました。さらに教育事務所の理数科担当者にも参加者への連絡や進行、感謝状の発行を依頼して巻き込むことによって、持続的な活動にしていくことを促しました。
自分たちで講師を務めることよりも、はるかに大変な準備でしたが、さまざまな苦労をしながら1年半関わってきた同僚が講師を務め、感謝状を受け取る姿は感慨深いものがありました。外国人によるものではなく、エチオピア人による研究会や研修こそが求められ、より大きな効果が生まれることを感じる活動となりました。今後の半年間は、私が帰国した後も同僚たちが活動を継続できるようにすることや、周辺校への巡回指導を行って活動の定着を図る予定です。
※実験の魅力広めたい・エチオピア・棚村慧史さん(2016年10月22日山形新聞)
※生徒の笑みが励みに・エチオピア・棚村慧史さん(2016年3月5日山形新聞)
■棚村慧史(たなむら・さとし) 米沢興譲館高から東京学芸大に進み、同大大学院を修了。専門は生物(生化学)で、新規エイズウィルス(HIV)阻害剤にかかわる基礎研究を行った。JICAの青年海外協力隊として2015年10月、エチオピアの首都アディスアベバに派遣された。職種は理科教育。米沢市出身、26歳。3度目の寄稿。