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覚えるほど人生は豊かに 英文学・小関文典教授(S42卒)  (2013年5月13日山形新聞)

蔵王合宿の様子
蔵王合宿の様子=山形市

地域×学び<67> 山形大地域教育文化学部から
  私の研究領域は16世紀英文学。対象はとくにシェイクスピアを中心とする劇作品とその時代の文学批評論である。シェイクスピアの時代は大航海時代の中にあって、新しい世界観・宇宙観が、キリスト教信仰を脅かす時代。その中にシェイクスピアの作品群を並べてみると見えてくるものがある。それを論じまとめようというのが目下の仕事だ。
 文学批評については、文献は海の中、取り付く島がないほどだが、ジョージ・パトナムという文学者に的を絞って研究している。当時の難解な英語に取り付いているうち、副産物である翻訳が面白くなってしまった。どちらの研究も多くが彼らの生きた時代の文献の解読に費やされている。これが私には面白いのだが、はた目にはどうか。
 そんな暗っぽい研究とは裏腹に、私の研究室を選ぶ学生たちは屈託がない。昔と違い、文学少女というよりは映像少女と言うべきで、小さいころからアニメや映画、あるいは漫画といった映像から文学に関心を持ち始めるものが多い。例えば『クマのプーさん』とか、『ロード・オブ・ザ・リング』とか、海賊文学をやりたいと言って譲らぬ女子学生もいる、しかし映像とは違い、作品を読むとなると、皆苦痛のようだ。
 ゼミでは作品を読み通し、粗筋をまとめて発表し、感想を述べるというのが最初の儀式だが、最初は10分間しゃべるのも大変な様子。だが心配無用。回を重ねるにつれ、議論は弾む。さまざまな作品を読むうちに、さまざまな人間がいることを理解し始める。後は彼女らの探究心を満足させるようにいざなうのが私の仕事だ。誰も教えてくれない疑問を自分で解く喜びへと。
 文学は言葉の世界。言葉はカメラの画像だ。たくさん覚えれば覚えるほど世界がはっきり見えてくる。そして読み手にもいろいろな人間との出会いとそして疑似体験の機会をつくってくれる。かくて自分の世界も格段に豊かになる。学生にいつも語っている。文学を楽しみながら命(Life)と光(Light)と愛(Love)に満ちた、そしてもう一つ笑い(Laugh)とほほ笑み(Smile)に包まれた4Ls人生を送るようにと。
 小関文典教授(1947年生まれ。南陽市出身。山形大への着任は1987年。)

5月13日山形新聞