「よみがえりのレシピ」イタリア上映に協力 古川澄子さん(高畠出身・H2卒)
(2013年1月1日山形新聞)
「よみがえりのレシピ」イタリア上映に協力 古川澄子さん(H2卒)
伝統を守るも壊すも人間。教育が大事
-ご出身は高畠町だそうですね。映画「よみがえりのレシピ」のイタリア上映に協力したと聞きました。
「米沢興譲館、東京外語大を卒業後、民間会社などを経て外務省に入省。ローマの日本大使館、ミラノの日本総領事館などに勤めました。2011年秋からはミラノ大文哲学部で学んでいます。『よみがえりのレシピ』と出会ったのは12年夏。高畠町に帰省中上映会があると聞き、家族で見に出掛けました」
-どんな感想を持ちましたか。
「林業のリサイクルを利用した焼き畑のことや、種を守り続けていくことがいかに難しいかを知ることができ、すごくいい作品だと思いました。上映委員会の人に『もしイタリアで上映する機会があれば、お手伝いしたい』と声を掛けると、実は行くことが決まっているとのこと。そこで字幕の翻訳や、当日は会場でのお客さんの呼び込みなども渡辺智史監督とたちと一緒に行いました」
-現地での反応はどうでしたか。
「イタリアでも日本と同じく農業の担い手の高齢化が進んでいます。経済成長優先で古いものがなおざりにされた時期もありました。映画で描かれている、古いものを見直そうという動きには共感する人が多かったようです」
スローフード発祥の地イタリアの市場 ©TURISUMO TORINO, Photo by Giuseppe Bressi
-イタリアと言えばスローフード発祥の地ですね。
「地産地消の活動が盛んで、地域色豊か、それは山形でも同じ。古里に帰ると、地元で採れるものは本当に美味しいとあらためて感激します。一方イタリアと日本で大きく異なるのは首都の影響力。イタリアでは首都ローマの他に、経済の中心はミラノ、自動車産業ならトリノ、さらにベネチア、フィレンツェと各地が独自の文化を持っています。日本は東京の力が大きくて、東京以外の声がなかなか響かない。地域を活性化させるには、足元にあるものの魅力を地元の人が見直すことが必要だと感じます。」
-景観や文化、イタリアの人々は古き良きものを大切に受け継いでいる印象を受けます。
「古いものにしかない魅力、豊かさがあります。それを享受できるのは、代々伝えてくれた先祖たちのおかげであり、自分たちも新しい世代に伝えていかなければならない、という考えを持っています。伝統を守るのも壊すのも『人間』。だから何より大事なのは教育だと思います。古典を学び、言葉の豊かさや他の時代の考え方。それがひいては長期的な視点を持つことにつながるのではないでしょうか」
-イタリアに学ぶことはたくさんありそうですね。
「山形と、イタリアの地方は、自然と寄り添う暮らしぶりが良く似ています。近年イタリアは日本ブーム。映画をきっかけに交流が盛んになることで、互いの古里を見直す機会になるのではと期待しています」