山形刑務所で長年絵画指導 山形の洋画家・遠藤賢太郎さん(S29卒)
受刑者の心開き 法相表彰受ける (2012年10月31日山形新聞)
「芸術は受刑者たちが尊厳を回復するのに有効だ」と語る遠藤賢太郎さん(77・S28卒)=山形市
山形刑務所の篤志面接委員として、絵画指導のボランティア活動を長年続けている洋画家遠藤賢太郎さん(77・S28卒)=山形市平清水1丁目、山形大名誉教授=が、功績をたたえる法務大臣表彰を受けた、「芸術は人間としての心を回復する力になる。今後も題材や指導法を研究していきたい」と、活動の更なる充実に向け意気込んでいる。
遠藤さんは、母校山形大で教えていた1990年に恩師の退任に伴い、篤志面接委員を引き継いだ。受け持ったのは水彩画クラスで定員は11人。教室の後ろに刑務官が立つが、終始和やかな雰囲気という。クラスでは鏡を見ながら書く自画像や、静物画、風景画に取り組む。思い出を振り返ったり故郷を思い浮かべて書いたりする構想画にも挑戦する。
個性を引き出すアドバイスを心掛けているという遠藤さん。指導は月に1回だが、多くの受刑者は批評をもらおうと自由時間に描きためた絵を提出する。家族を思って描いた絵には穏やかな表情の人物が登場し、描き手の優しさが表れるといい、こうした絵を見るたびに「どうして罪を犯す前に踏みとどまれなかったのか」と悔やまれるという。
表彰は都内で26日に開かれた全国篤志面接委員大会の席上、行われた。大臣表彰は全国で25人。遠藤さんは「社会性や人間の尊厳を回復するのに芸術は有効だと思う。芸術の感動をよりどころに、心を強く生きてほしい」と喜びを語った。