顔の見えるお土産選び・山形県紅花染 (トランヴェール2012年5月号)
「染織工房わくわく舘」で紅花染を手掛ける齋藤勝廣さん(S52卒)
米沢の清らかな水と冬の冷え込みが紅花染の美しい色を創るんです。
真っ白な絹糸は薄紅に染まり、幾度も染め重ねるほどに、鮮やかな赤色に変わっていく。
「古くから『寒の紅』と言われ、冬の厳しい冷え込みの中、米沢の清らかな水で染めると、さえて美しい色が出るんです」と語るのは、「染色工房わくわく館」の齊藤勝廣さん(S52卒)。
染料となる紅花は7月上旬ごろに咲く。黄と赤が交じった愛らしい花で、摘んだ花びらを発酵乾燥させ「紅餅」にして保存する。最上川沿いの平野は寒暖の差が激しい気候と肥沃な土地に恵まれ、上質な紅花が栽培されてきた。
それが出羽の特産として名を馳せたのは江戸中期。九代米沢藩主上杉鷹山公が藩政を立て直すため様々な産業を興し、その一つとして紅花を奨励する。「最上紅花」でつくられた「紅餅」は京都や大坂、江戸へ送られ、高価な染料として商われた。
「『万葉集』にも紅花が歌われるほど歴史は古く、その美しさは語り継がれています。紅で染めた着物や口紅は女性の心を引きつけ、高貴な方々に親しまれてきました。明治以降は生産も衰退しましたが、戦後、紅花染の復興に尽力した人たちの手で伝統的な米沢織に生かされるようになり、山形県の特産品の一つとなったのです」
紅花染のシルクコースター(ロング)各1,155円、シャーリングスカーフ各7,350円
30年来、紅花染に携わる斎藤さんは紬の柄を出す糸のこまやかな染色に取り組んできた。実際に織った商品を販売し、お客様の要望を聞きたいと始めたのが「染織工房わくわく舘」。米沢織の手織りと紅花染を体験でき、コースターやハンカチなどの作品作りも楽しめる。
「山形の土地で育まれた紅花を使って作り上げる喜びがあり、日本人の心を捉えてきた歴史も感じる。そうした思いを紅花染を通して伝えられたら幸せですね」と斎藤さん。
淡い紅色から濃紅へ、さらに柔らかなオレンジや黄と多彩な色合いが出るのも紅花の魅力。米沢の地で自然の温もりが伝わるような紅花染に触れてみてはいかがだろう。
染織工房わくわく舘=山形県米沢市御廟1-2-37
JR「米沢駅」から車で10分 営業:9:30〜16:30 休日:水曜
TEL:0238-24-0268