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絆に希望託して 県職員小野さん・3冊目の小説「神の遺言」出版
震災受け一部改稿「国が立ち直る光入れた」
(2011年5月24日山形新聞)

小野徹さん
「神の遺言」を出版した小野徹さん(S55卒)

 県職員として勤務する傍ら小説の創作活動を続ける米沢市の小野徹さん(49・S55卒)=ペンネーム・所健保(ところたけお)=が自身3冊目となる小説「神の遺言」を出版した。現在の日本とは違う戦後史をたどった異世界を舞台に繰り広げられるサスペンス。出版直前に発生した東日本大震災を受けて急きょ一部を書き直し、絆の力に理想社会実現の希望を託す内容となった。

 スキー場での事故によって、パラレルワールド(現在と並行して存在する世界)に入り込んだ短大教授が主人公。異世界の日本は、太平洋戦争でポツダム宣言を拒否して徹底抗戦を選択、多くの犠牲を払いながらも「百年予測」に沿って共和制国家が築かれている。国民一人一人が自立した真の理想社会実現の鍵を握る「第四次玉音放送」のレコードをめぐって、日本の国家転覆を画策する外国組織との攻防が繰り広げられる。戦後史、人工知能、情報管理社会、テロなど多彩な要素が盛り込まれたエンターテインメント性の高い物語。米沢が舞台になっているほか、「百年予測」の構想者が鶴岡市出身の石原莞爾という。県民にとって感情移入しやすい設定だ。
 当初は3月中の出版を予定しており、2度目の推敲(すいこう)作業中に大震災が発生。「100年後の日本の在り方をテーマにした作品を出そうという時に、千年に一度の震災があった。自分の思いをリアルタイムで文字にしておきたかった」と終章を中心に書き直した。利他的な行動や、人間同士の絆が持つ力に理想社会実現の可能性を見出す内容について「日本が立ち直るきっかけ、光を入れたつもり」と解説する。
 30代から執筆を開始。置賜地方が戦国時代にタイムスリップする設定の「地盤沈下」(2000年・東洋出版)など2冊をすでに出版している。「神の遺言」は、着手後すぐに頓挫し数年間放置していた素材。昨年11月に執筆を再開し一気に書き上げ、電子書籍出版サイトを利用して自費出版した。6月には、以前江戸川乱歩賞に応募した作品に加筆した「アイ アム ジョーカー」を出版予定。
 現在は置賜総合支庁福祉課指導専門員で休日の夜などを創作時間に充てる小野さんは「書きたいテーマは5、6本あるが、マイペースで取り組みたい」と話している。

電子書籍販売サイトBookWay「神の遺言

「神の遺言」・・・スキー場での事故をきっかけに、「前世」から「現世」への転生を果たした湖山武。彼が転生したのは、GHQによる占領を許さなかった非武装中立国家の日本。そこでは、21世紀のユートピアと呼べるような理想社会が現出していた。
  現世での名前と肉体を得た彼は、新しい家族とともに幸福に満ちた日々を送る。
 そんな彼の前に謎の女、国府珠代が現れる。珠代は、湖山が転生する前の耕作が、国立図書館から秘蔵のレコードを盗み出したことを説明し、その捜索と返却を湖山に迫る。そのレコードには、昭和天皇が生前吹き込んだとされる第四次玉音放送の内容が収録されており、速やかに返却しない場合、珠代は彼を告訴するという。
  湖山は、耕作がレコードを盗んだとされる前後の足取りを追うため、珠代とともに上京するが、そこでは数々の危難が彼を待ち受けていた……。
所 健保(小野徹さん)プロフィール
山形県生まれ。
明治大学文学部文学科独文学専攻卒業。
2000年4月に、戦国時代へのタイムスリップをモチーフとした「時盤沈下」を東洋出版より出版。
2007年2月に、世界中の男と女の性が入れ替わるというコメディSF「MIX SEX」を文芸社より出版。
2010年4月に、GHQの占領を受けなかった現代日本への「転生」を描いた「神の遺言」をBookWayより電子出版。

5月24日山形新聞