途上国支援あり方考える 高橋 由美子さん(S60卒) (2009年10月14日山形新聞掲載記事)
現地の人たちと写真に納まる高橋由美子さん(後列左)
西アフリカ・ブルキナファソ。私たちが訪れた8月は雨期にあたり、山形の夏以上の厳しい蒸し暑さで、赤道に近い熱帯の国であることを実感しました。首都ワガドゥグは車とバイクと自転車で道路が混雑し、車窓からの景色はどこを見てもたくさんの人であふれていました。
ワガドゥグから南西に260キロほどのウンデという町で、看護師として働いている青年海外協力隊員の菅原友美さん(鶴岡市出身)を訪ねました。菅原さんは、民族衣装に身を包んで私たちを迎え、診療所へと案内してくれました。幹線道路から一歩脇道に入ると、道路は舗装されておらず、雨の後だったのであちらこちらに大きな水たまりができており、車で通るのが難しいような道でした。
診療所は、水道や電気がなく、無造作に置かれている診療器具、マットが破れたベッドなど、日本の病院とは比べものにならない不衛生な環境でした。社会資本の整備の遅れを目の当たりにし、この国が途上国だということをあらためて感じ、看護師として活動している菅原さんのご苦労を垣間見たような気がしました。
しかし、「子どもたちの笑顔が何よりの喜び。半面、栄養失調でやせ細った子どもの腕に点滴の針を刺す時はつらい気持ちになる」と話す菅原さんの表情には、強い意志と使命感が満ちあふれていました。
ブルキナファソに行って学んだことが二つあります。一つは水の使い方です。土壁に囲まれた半畳ほどのスペース。それがブルキナファソのシャワールームです。バケツ1杯の水で頭の先から足の先まで洗い、さらに歯磨きまでします。ブルキナファソの人が1日に使う水量は、日本人が水洗トイレで1階に流す水量と同じだそうです。日本は水の使い方をブルキナファソに学ぶべきであると実感しました。
2つ目は援助の形です。現地の小学校ではボールペンを使って勉強すると聞いて、私たちが勤務する学校の生徒たちにボールペンを集めてもらい、持っていきました。その数、数百本。小学校を訪問した際、子どもたちにボールペンを渡そうとすると、現地の先生から「せっかく持ってきていただいたのですが、子どもたちの前では渡さないでください」という一言。
理由を聞くと、今日ボールペンを渡せば次の日から物もらいの人が学校に集まり、さらに一つの学校だけにあげることは不公平につながるから―ということでした。物が不足している状況では、物がもらえることにものすごい競争と嫉妬が生まれるのです。そのことを考えると、ただ単に物をあげることが援助ではないと感じました。
世界でも最貧国と言われるブルキナファソを訪問した経験を生かし、厳しい環境で奮闘している菅原さんの活躍、途上国への支援のあり方を生徒たちにしっかりと伝えたいと思います。
ブルキナファソの村で見かけた井戸。現地の人たちは貴重な水を大切に使っている。
教師海外研修は、国際協力機構(JICA)の取り組みの一つ。小学校、中学校、高校などの教諭を開発途上国へ約10日間派遣し、その国がおかれている状況、また日本が行っている国際協力の現場を視察して国際協力への理解を深め、その成果を次代を担う児童・生徒の教育に役立ててもらうことを目的としている。高橋さんと佐藤さんは、今年8月3〜10日にブルキナファソに滞在した。
高橋由美子(たかはし・ゆみこ)さん
飯豊町出身。日大法学部を卒業後、長井北中、中津川中で教諭を務めた後、2004年4月から飯豊中に勤務。担当は社会科。今回が初寄稿。