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年末の風景に重なる「うま煮」・ラズウェル細木(漫画家・S50卒)
(勝手に東北世界遺産・第145号「米沢鯉」 2015年4月18日朝日新聞より)


きれいな地下水が注がれた池で育てられるコイ=山形県米沢市相生町

 山形県米沢市は「米沢鯉」の産地で、私も小さい頃から食べてきました。とくに大みそかの夜から正月にかけては、必ず食卓に上がります。全国各地で「年取り」の魚は様々ですが、米沢はコイなんです。
 小学生の頃、雪の降る中、一家総出でスーパーの買い出しに行った際の店頭の光景を覚えています。店員が冷たい水の中から生きているコイを取りだして、包丁の背で頭をコンコンとたたいておとなしくさせると、まな板の上に載せて、うろこも取らずにざくざくと輪切りにしていく。切られた尻尾がピクピク動いていたりして、生命力に驚いたものです。
 それを袋に入れて持ち帰ると、母親は、すぐに大きな鍋に入れて砂糖としょうゆ、日本酒で甘辛く煮る「うま煮」を作ります。年始客にも出していたので、2、3匹分をまとめて作っていたと思います。全国的に見ればコイの料理は「洗い」や、みそ味の「鯉こく」などがありますが、米沢では「うま煮」以外は食べたことがありませんでした。
 一番最初にはしをつけるのが、うろこ。言葉で表すのが難しい食感(あえて言えば「きしきし」という感じでしょうか)で、噛みしめると中からじわっとうま味が出てくる。しばらくうろこだけ味わってから、脂がのった皮と一緒に食べます。
 次は内蔵。少し柔らかく、ねっとりとした感じで、味の濃い煮汁とよく合うのです。卵が入っている時は、うれしかったですね。
 最後が身。これもおいしいのだけど、小骨が多いので飲みこまないように注意しなければなりません。
 米沢でコイの養殖を広めたのは、江戸時代の藩主・上杉鷹山と言われています。財政難の米沢藩を立て直すため、「食べられる生け垣」としてウコギを推奨した人でもありますが、環境の変化に強いコイを貴重なたんぱく源として、福島県の相馬から導入しました。
 今では、コイのうま煮は一年中食べることができますが、私にとっては、雪が降る米沢の年末の風景と一緒に心に残るごちそうなんです。

■らずうぇる・ほそき 漫画家。1956年、山形県米沢市生まれ。代表作に「酒のほそ道」。2012年に第16回手塚治虫文化賞の短編賞を受賞。


山形市内の百貨店でも売られている「鯉の甘煮(うまに)」濃厚な味が魅力だ

 米沢市内の老舗「タスクフーズ」の宮坂宏社長(S52卒)によると、コイ料理が定着した背景には、吾妻山系からの豊かな伏流水があるという。養殖のコイから泥臭さを除くため、調理する前にきれいな地下水の池で3週間、えさを与えずに育てる「陸締め」が欠かせないからだ。
 うろこと皮が好きというラズウェルさんに宮坂社長は「通の食べ方ですね」。最近は圧力鍋で骨まで食べられるようにした商品が人気というが「どうしても皮の脂が少なくなってしまうんですよ」。「ちびり、ちびり」。こんな表現が合う料理かあってもいい。

4月18日山形新聞