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「奥の細道」現地をたどる 日展で10回目の入選を果たした米沢の油絵画家 沖津信也さん(S41卒・64)
自分の感性の全てをキャンバスに (2012年2月5日山形新聞)

沖津信也さん

 油絵画家の沖津信也さん(64・S41卒)=米沢市木場町=が昨年、日展で10回目の入選を果たした。中学校長時代は卒業生に似顔絵を贈り続けたことで知られるが、現在は風景画を主とした創作活動中心の生活を送っている。創作に込める思いや今後の抱負を聞いた。
 ―日展で10回目の入選を果たしました。
 「初入選から20年近くかかり、ようやく節目に到達できました。感激と同時に、画業に対して今後一層研さん、努力を重ねなければと決意を新たにしています」
 ―現在はどんな作品を。
 「松尾芭蕉の『奥の細道』を油絵点描で描く旅を続けています。日光や松島、平泉、羽黒山などを巡る写生の旅で、東京から岐阜の大垣市までの全行程を制作します。その日、その時、その場でしか感じられない風のそよぎや小鳥のさえずりといった生命感を大切にしたいので、現地での創作活動にこだわっています。また私の作品は文学や文化から多大な影響を受けていて、芭蕉の句を自分の中でかみ砕いて味わうことでイメージの世界が広がっていきます」
 ―点描で描くのはなぜ。
 「影響を受けた画家に印象派のモネがいます。光の粒子を拾っているモネの作品を吟味するうちに、ものを形作っているのは線でなく点であることに思い至りました。暗い面の中に明るい光を拾って無数に点を打っていくことで、徐々に形が現れてくる。点であるからこそ、降り注ぐ陽光や水のしぶきを正確に表現できるとも考えています」
 ―東日本大震災から1年になろうとしています。美術のもつ力、役割をどう考えますか。
 「震災のあった昨年は、羽黒山五重塔を題材にした『鎮魂2011・神の道』や、松島に朝日が昇るさまを描いた『鎮魂の海2011』を描きました。共感から鎮魂へ、悲しみも分かち合いながら互いに励まし合おうという気持ちを持てるようにとの思いを込めました。生きる力。生きる喜びを見る人に与えられるような作品を仕上げる使命が、芸術家にはあるのではないでしょうか」
 ―今後はどんな活動を。
 「引き続き『奥の細道』にこだわり、終わりのない芭蕉の魅力輝く旅を追い求めていきたい。『奥』は陸奥(みちのく)の奥ではなく、奥義の奥であり、一度筆を置いたからといってそこで完成というわけではありません。一連の芭蕉の句は、東日本のことを本当に理解した上で詠まれています。私自身も旅を通じて感じたこと、自分自身の感性の全てをキャンバスの中で表現したいと考えています」

点描画法で四季描く・沖津さん油絵展(2010年6月17日山形新聞)
点描で描く本県山河 米沢の沖津さん都内で個展(2009年11月20日山形新聞)

 

2月5日山形新聞