藩校興譲館、米沢中学、米沢一高、米沢西高、米沢興譲館高と続く米沢興譲館同窓会公式サイト

ホームページロゴ

震災報道 教材に 米沢・南原小で取り組み 各紙比較、取材体験に感想
(2011年5月12日山形新聞)

中沢謙一教諭
東日本大震災の翌日の新聞各紙を掲げ、違いについて児童と話し合う中沢謙一教諭(S62卒)
=米沢市立南原小学校

 東日本大震災を報じる新聞を、「総合的な学習」にフル活用している小学校がある。各紙を読み比べることで、未曽有の大災害について学ぶだけでなく、基礎学力やコミュニケーション能力の向上にも役立てるのが狙い。子どもたちの関心も高く、「活字」に親しむきっかけにもなりそうだ。

 米沢市立南原小学校の6年1組。担任の中沢謙一教諭(S62卒・43)は11日の授業で、黒板に山形新聞、河北新報、朝日新聞、読売新聞を並べて張り出した。震災翌日の各市の1面だ。
 「山新は誰に向けて書いているか分かりますか」。中沢教諭が35人の児童に問いかけると、「山形!」と声が上がった。理由を尋ねると、「『米沢』って書いてある」と児童は山形新聞の見出しを指さした。
 中沢教諭は「東日本」が見出しに躍る全国紙と県内の地名が見出しにある地元紙の違いを指摘し、「朝日や読売は全国の読者が対象。誰に向けて書くかで内容が異なる」と説明した。
 続いて中沢教諭は1面の記事を朗読。震源の深さや死者の数が新聞によって違っていることに気付かせ、「記事は書く人によっても違ってくる。何が正しいのかを考え、比較することで違いが分かることが大切」と強調した。
 この日は、記者が宮城県の被災地での取材体験を紹介。メモを取って聞いていた児童らは5分ほどで感想をまとめ、「(犠牲者の数だけでなく)一人ひとりにスポットライトをあてることが大切」「食べるものや寝る場所がない中で取材してすごい」と隣同士で感想を読みあった。
 新学習指導要領で新設された総合的な学習で、新聞を活用した授業はこの日で4回目だが、オープンスペースになっている教室の大きな机には震災を伝える各紙を常時並べている。
 約15年前からNIE(教育に新聞を)に取り組んできた中沢教諭は「千年に1度の大災害。いま起きていることを伝える新聞を通じて、子どもたちは多くのことが学べる」と話す。
 「新聞を使って東日本大震災を追う」をテーマにした授業は1年間続ける。児童たちは今後、各自が関心のあるテーマを持って新聞を読んで調べたり、発表したりする計画だ。伊藤尚矢くん(11)は「新聞でいろんなことを知ることができる。僕はサッカーが好きだから、スポーツ界からどんな支援があるのか調べるつもり」。長谷川千尋さん(11)は「それぞれの新聞の違いを見つけるのが楽しい。家でも読みたい」。
 中沢教諭は「原発問題や復興など様々な課題があるが、新聞を通じて社会のつながりや人間のすごさを知るきっかけにもなるはず」と話している。

※NIE「Newspaper In Education」の略。学校などで新聞を教材に活用することを示す。小学校では今年度から「言語活動の充実」を盛り込んだ新学習指導要領が全面実施され、「新聞の活用」も明記された。高学年の国語で「読む力」を育てる指導事項の具体的な方法の一つに「編集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読むこと」を挙げている。
 日本新聞協会から「実践校」に指定されると、複数の新聞が配達される。昨年は全国で533校、県内では小学校3、中学校3、高校2の計8校が指定を受けた。

5月12日山形新聞