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郷土料理描き続ける・ラズウェル細木さん(S50卒)
「自分が飲んべえだから」酒とつまみにこだわり  (2010年6月13日山形新聞掲載記事)

ラズウェル細木さん
飲んべえたちの酒とつまみに対するこだわりを漫画で描く米沢出身のラズウェル細木さん
=東京都内の事務所=(本名:窪田京一さん・S50卒)

 「平日の午後の新幹線。ガラ空きで出張帰りとなれば、もー飲むしかない」―。左党なら思わず「あるある」と共感したくなる光景。仕事帰りに居酒屋で「ちょっと一杯」が何より楽しいという酒好きたちの酒とつまみに対するこだわりを描いた「酒のほそ道」を週刊漫画誌に連載している米沢市出身の漫画家ラズウェル細木さん(53)。10本以上の連載を抱えているが、テーマはどれも「酒とつまみ」。その理由は単純明快。「自分が飲んべえだから」
 幼稚園のころから漫画が大好きだった。「影響を受けたのは手塚治虫作品。特に『0マン』は夢中になって読んだ」と振り返る。米沢興譲館高を卒業後、1年の浪人生活をへて大学に進学した。「早稲田の漫画研究会に入りたい」。大学選びにはこだわった。数ある漫画研究会の中でも「課長島耕作」などの作者弘兼憲史さんらを輩出した“早稲田の漫研”があこがれの存在だった。
 在学中から漫研OB作家らのアシスタントをしながらノウハウを学んだ。卒業後はイラストレーターの仕事をし、10年後に漫画家デビュー。ペンネームは大好きなトロンボーン奏者「ラズウェル・ラッド」と、当時アルバイトしていた出版社でお世話になった「細木さん」からそれぞれちょうだいした。「漫画の主人公の名前として作ったが、響きが良かったので自分のペンネームにしちゃった」
 「酒とつまみ」は当時からテーマにしていた。代表作となる「酒のほそ道」はデビュー当初からの連載で16年目、単行本は26巻に上る。若干太めの線を使い、輪郭は簡潔に描く、丸みがあって柔らかく、ほのぼのとした雰囲気が特徴だ。

酒のほそ道
ラズウェル細木さんが日本文芸社の週刊漫画誌で連載している代表作「酒のほそ道」
©ラズウェル細木/日本文芸社

 「器に盛りつけされた料理を描く場合、克明に線を入れ、リアルに描くことが必ずしもおいしそうに見えるとは限らない。簡単な輪郭線の方が(湯気が上がっていたり、たれの広がり具合など)ツボを押さえていレば、詳しく書く以上においしそうに見える」と語る。

 米沢牛やアケビ、山菜など漫画の中には山形の郷土料理や特産の食材もよく登場する。芋煮をテーマにした時には、米沢市内の河川敷が舞台となった。東京に住む主人公が米沢出身の友人と一緒に芋煮会をしていると、高校の同窓生や部活の仲間などから次々と誘いがかかる。「秋の短い期間にいろんな仲間と鍋を囲んで酒を飲む。芋煮会の醍醐味(だいごみ)を描いた」と言う。
 父親が酒好きで、よく会社の同僚を家に連れてきて宴会を開いていた。親せきにも酒好きが多く、正月には多くの人が家を訪れた。米沢の地酒と旬の食材を使った母親の手料理を味わいながら仲間や親せきと楽しく盛り上がった。「子どものころから酒のみの環境にあったんでしょうね」。「酒とつまみ」にこだわった漫画を描き続ける原点は、米沢市で過ごした少年期にあるのかもしれない。
 次に漫画で取り上げたい山形特産の食材は「オカヒジキ」と言う。「全国で広く知られた食材だと思っていたが、主に山形で食べられていたと最近知った。おひたしにして、からしじょうゆで食べるのが一般的だが、ギョーザの具としてもおいしい。この食材を広めたい」と意欲を見せる。
 長く「酒とつまみ」をテーマにした作品を描き続ける中、最近ふと、自分は山形出身だと再確認することがあるという。それは酒を飲む場面を描いているとき。「山形、東北の人の飲み会は量も多いし、どっしりと腰をすえて長時間のむでしょう。自分の作品を読み返してみると、その要素が無意識に出てるんだなあ」。ラズウェルさんが描いている世界は山形の飲んべえの姿そのものなのかもしれない。

6月13日山形新聞