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受け継ぐ広介作品の精神 多様な示唆、心も豊かに
浜田広介記念館理事長 鈴木征治さん(S33卒) (2010年1月15日山形新聞掲載記事)

鈴木征治さん
浜田広介記念館理事長 鈴木征治さん(S33卒)


  大リーガーの松井秀喜選手がシーズン後にニューヨークの日本人学校を訪問し、絵本の朗読に挑戦したという記事を目にした。題名は「泣いた赤おに」。松井選手は読み終わった後、子どもたちに「みんな友だちを大切にしようね」と友情の大切さを説いたという。
  この「泣いた赤おに」は今も多くの人々に愛読される浜田広介「ひろすけ童話」の代表作だ。広助は1893(明治26)年に高畠町に生まれ、米沢中(現米沢興譲館高)から早稲田大に進む。50年余りの間に創作した作品は約1千編に上り、「むく鳥のゆめ」や「りゅうの目のなみだ」など珠玉の作品を残した。これらの作品は歳月を経た現在も、ひろすけ童話として身近に存在している。
  人の哀れや善意の尊さを示した広介作品をもっと多くの子供たちに読んでもらいたいという願いを込め、1969(昭和44)年に「ひろすけ会」が生まれた。県内の児童生徒を対象に読書感想文や詩、童話などを募集してきた。そして89年に「浜田広介記念館」が広介生誕の地、高畠町屋代地区に建設され、昨年20年の節目を迎えた。
  ひろすけ童話が幼い子供たちに与えた大きな役割と氏の偉業をたたえ、90年に「ひろすけ童話賞」が創設された。この賞はヒューマンな愛と善意に基づくひろすけ童話の精神を継承し、新たな童話の世界の創造とその本質を発揮していく作家に育てようと設けられた。
  選考の対象となるのは「過去1年間に単行本や新聞、雑誌に発表された作品」で、応募は毎年100点前後に及ぶ。広介が初代会長を務めた日本児童文芸協会関係者の予備選考を経て、最終的に優れた作品が1点選ばれる。
  第13回の受賞作は、シンガー・ソングライターのさだまさしさんの「おばあちゃんのおにぎり」だった。さださんは「この賞をいただくことは光栄であり恥ずかしくもある。浜田広介という偉大な童話作家をたたえる賞で、身が引き締まる思いだ」とあいさつした。
  記念すべき昨年の第20回受賞作品は、福明子氏の「ジンとばあちゃんとだんごの木」だった。生き抜く命の尊さと、寄り添う家族の温かさを、涙と感動でつづる傑作だった。
  童話は、子どもの世界だけにとどまらず、わたしたち大人にも多様な示唆を与えてくれる。高畠町は「童話の里」を掲げ、学校と地域を挙げてよい本を読む習慣作りに努めている。心豊かな人間の育成のために読書の推進は欠かせない。教育、文化、生涯学習の施設として、さらにこの町の観光施設として、本館の果たす使命は大きい。(高畠町在住)

 

1月15日山形新聞